2023年8月30日

令和5年度第1回現地見学会レポート(山形県置賜地域)

2023年7月31日~8月1日に、山形県置賜地域において一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会主催のWOOD BIO交流プラットフォーム令和5年度第1回現地見学会が開催されました。

本記事は上記見学会の現地レポートです。
木質バイオマスエネルギーや森林の利活用に興味のある方々に「自分も研修に参加すればこのようなノウハウを得ることができる!こんな人たちとネットワークが作れる!」というイメージを持っていただければと思っています。

また、実際に木質バイオマス熱利用設備を導入されている方にとって、どのような面が魅力的であるのかについてもお伝えします。

著者について

戸簾隼人(とみすはやと)
滋賀大学大学院 / 一般社団法人インパクトラボ 理事
滋賀県野洲市出身。中学時代を中国・上海で過ごした経験から、経済成長に伴う環境課題・エネルギー課題に興味を抱く。大学ではバイオマスの微生物代謝産物利用に関する研究を専攻し、地元・滋賀の中小発ベンチャー企業に初の新卒社員・研究員として入社。退職後、現在、一般社団法人インパクトラボ・滋賀大学にて環境負荷の低い生活方式に関するデータ解析方法について研究を行う。

見学会実施の背景と目的

見学会は、山形県・置賜地域における木質バイオマス熱利用を実践している施設を訪問し、施設導入に向けたプロセス、課題、マネジメント方法について理解を深め、併せて、先行事業者・参加者間でのネットワークを構築することを目的に開催されました。

その中でも特に、設備の導入や維持管理だけでなく、燃料調達手法までも変える木質バイオマスボイラーへの転換を行う上で、失敗しないための具体的なノウハウを得るとともに、燃料材の安定供給にむけた工夫について理解することを目指しました。

特に見学先の各施設に設置されているボイラーや、チップセンターの施工者・仕掛け人である那須建設株式会社の担当者の方々から話をいただきながら、民間主導の木質バイオマス事業について学びました。

見学先一覧

おきたまチップセンター

おきたまチップセンターは、白鷹町役場の木造庁舎新築に際して導入された木質バイオマスボイラーへの燃料の安定供給を確保するために開設されたものです。その後、地域において新たに導入された木質バイオマスボイラーに対しても、安定的に燃料用チップを供給する基地となっています。当初は建設工事支障木や河川内樹木などの未利用材を利用していましたが、チップ需要量が増加する中で、白鷹町内の財産区有林の管理経営を行う「おきたま林業株式会社」を木材販売企業と共同で設立し、計画的な林業経営によって生産される低質材をチップ原料として収集するシステムを構築しました。

なお、本地域での木質バイオマスボイラーの設置・利用における特徴として、燃料となるチップとボイラーそれぞれの供給元・メンテナンス元を、那須建設株式会社が主体となり一元化していることです。これにより、木質バイオマスボイラーにおいて使用するチップの品質の安定化や、チップの品質に起因するトラブルの未然防止など、PDCAが回しやすい状況を作り上げることに成功されたことが、地域で木質バイオマスを循環的して利用することに繋がりました。

那須建設株式会社 営業部長の菅原様によると、「特にエネルギー会社とは、石油とバイオマスという、燃料自体の競合が発生することで市場を取り合う形になってしまう。しかし、できる限り地域の中で双方のできることを創造し、互いに納得した方法を取り入れることが、長く地域で使われる事業には必須だ」と伺いました。

おきたまチップセンター株式会社の安部様によると、最も大変なことは需要の高まる冬季の水分(湿潤基準含水率)管理と除雪作業とのことでした。夏季は熱利用が少ないこともあり、毎日チッパーは稼働していませんが、冬季はフル稼働でチップの生産を行っているとのことです。このため、原木の状態で1年半は乾燥しておきたいのに1年程度でチップ化することになり水分が十分に下がらない場合もあるようです。

供給するチップを木質バイオマスボイラーで利用するためには、原木からチップに加工する段階で水分を35%程度に低下させ、出荷する必要があります。現在は、自社でボイラーのメンテナンスや運用を行っていることから、比較的柔軟に供給できることが強みとのことです。

本チップセンターでは、ドラム切削方式によって製造される切削チップを供給しています。現状で5施設に供給するため、1日あたり100~150㎥のチップを生産しています。現状の燃料供給先からさらに供給先が増えると、現在のチップセンターの生産体制を強化していく必要があるとも伺いました。

ボイラー設置・メンテナンス事業

グループ企業:はぎ苑(温浴・宿泊施設)導入ボイラー

参考リンク:はぎ苑HP
参考リンク:山形県長井市 卯の花温泉はぎ乃湯(WBエナジー導入事例資料)

那須建設株式会社が木質バイオマスボイラーの利活用を始めたきっかけは白鷹町役場への木質バイオマスボイラー導入の相談でした。当初は導入事例も少なく、燃料の安定的な確保やノウハウ不足などの観点で前向きな検討ができなかったとのことでした。

そこで、まずは自社グループ内で本当にまかなうことができるかを検証する目的もあり、前述したおきたまチップセンターでの燃料供給、そして利用先として、温浴施設での導入が検討されました。それがはぎ苑でのボイラーリプレースだったとのことです。木質バイオマスボイラーを設置するための建屋設計も初めてであり、必要最小限ではなく余裕を持った大きなスペースを取る設計となってしまったとのことでした。

またサイロについては、メーカーの情報どおりに作成すると、ダンプアップした状態でチップが搬入できない課題もみつかり、補強する足場を自社で作るなど、国産品ではない故の前提条件差を埋めるための試行錯誤が理解できます。

このようにグループ企業の施設として導入する中で、チップ供給やメンテンナンスの課題が判明してきたと伺いました。その背景として温浴施設ならではの、ボイラートラブルによって施設を止めることが許されない24時間・365日稼働(定休日にボイラーメンテナンス)という状況があります。連続稼働を行う事で、様々なトラブルや故障などに遭遇しますが、そこでのトラブル対処経験が、ステークホルダーの施設に導入する上での課題点や事前に準備しておくこと、対処方策を知ることになり、結果としてノウハウの蓄積に繋がっているとのことでした。

地方行政:白鷹町役場導入ボイラー

参考リンク:山形県西置賜郡白鷹町役場HP

白鷹町役場では、2022年に地元の木材を利用した木造庁舎に建替えた際に、地域資源を活用する目的で木質バイオマスボイラーが導入されました。ボイラーは、冬季の館内全体の暖房に利用されています。暖房にはヒートパネルだけでなく、床下から拭き上げるブロアーも設置されており、庁舎内全体の空気が暖められ、かつ、換気ができる設計になっています。なお、夏場の冷房として利用するためには熱効率が悪くなるため採用されておらず、エネルギー効率性を重要視した運用が行われていました。

庁舎内の視察後、役場裏手に設置された木質バイオマスボイラー、およびチップサイロを紹介していただきました。これらは那須建設株式会社として、2台目となる施設です。役場への導入に当たり、前述したはぎ苑の木質バイオマスボイラーの運用によって判明した課題点を解消することで、役場のボイラーシステムは特段トラブルが発生すること無く、運用できているとのことでした。

実際、サイロはダンプアップしても、きっちりとサイロ内にチップが納まりきる形に改修されています。なおサイロのサイズは、おおよそ4トンダンプで3台分のチップを貯めることができます。最盛期である冬季の利用でも月に1~2回の搬入で間に合うとのことでした。なお、チップ消費量は地元の木材の利用によって十分供給が可能とのことです。

建屋内部も、2台目であることから非常にコンパクトに設計されていることが、写真からも分かります。

一方、必須となるメンテナンスとして、炉内に溜まった灰を1ヶ月に1回程度掃除する必要があるとのことでした。そのため、コンパクトな設置を心がけたとしても、このメンテナンスができるだけの十分な隙間や場所の確保を忘れないことが大切とのことです。

また役場では、バックアップボイラーとして重油ボイラーを併設しています。灯油ボイラーではなく、重油ボイラーを設置しているのは、これまで役場では非常用発電に利用する燃料が重油であり、これを定期的に使用しないと劣化するためとのことでした。木質バイオマスボイラーの良い点として、様々なボイラーのバックアップ設置、およびリプレースが可能であり、一つにまとめ上げる必要がないこともここから分かります。

実際に建設されている様子は、以下のURLから閲覧可能です。

参考リンク:2019年スタート!(那須建設株式会社HP)

熱供給事業

以下で紹介する施設での木質バイオマスボイラー導入は、那須建設株式会社による熱供給事業という形が採用されています。

つまり、木質バイオマスボイラーの設置、運用、燃料供給は那須建設株式会社側が行い、施設側は年間契約によって熱の供給を受けるというものです。施設側は、従来の石油ボイラーで使用していた燃料費よりも安価な価格で契約することによって設備運用のリスクなく熱供給が受けられます。

障碍者支援施設:陽光学園導入ボイラー(稼働前)

参考リンク:陽光学園 | 事業案内 | 社会福祉法人白鷹福祉会

なお、この施設での熱利用は暖房、給湯となっていますが、利用量があまり大きくありませんので、チップの消費量も年間1,200㎥程度を予定しているとのことでした。稼働前の施設であるため、サイロ内部の構造がよく分かり、チップがサイロ内に溜まらない仕組みや安全性を確保するための工夫などを知ることができました。

本施設は120kWの木質バイオマスボイラーを2台並列に設置する方式になっています。240kWのボイラーを1台設置した方がイニシャルコストを抑えられそうですが、小型ボイラーを複数設置することで、メンテナンスやアクシデントによって、1台が停止した場合であっても、もう一台で稼働ができるため、リスクヘッジが取れるそうです。

また本施設での工夫がみられた点として、ボイラーから施設までの熱導管の設置に側溝が用いられていました。構内には既に多くの配管が地中に埋設されているため、熱導管を必要な深さに埋設できなかったそうです。とはいえ、浅く埋設してしまうと車両通行時に影響が出るため、苦肉の策として側溝が用いられたそうです。一方、施工後のメンテナンスの簡便性や、異常把握を行いやすくなるメリットがあるそうです。なお、熱のロスが心配されましたが、熱導管の性能を考慮すると影響は少なく、施工に至ったとのことでした。

介護老健施設:リバーヒル導入ボイラー

参考リンク:リバーヒル長井 社会福祉法人長井弘徳会 介護老人施設

本施設は2023年7月に設置されたとのことです。120kW×3台の木質バイオマスボイラーシステムが設置されていました。陽光学園と同じく、那須建設株式会社による熱供給事業として施設側と年間契約を結んでいます。陽光学園に比べ熱需要量が大きく、チップ消費量は年間2,400㎥を予定しているとのことでした。

小型ボイラーを並列に複数台設置する考え方は、陽光学園と同様、熱供給面でのメンテナンスやアクシデント時にスムーズに対応できるメリットがあるためです。

なお本施設では、冬季などの暖房に加え温浴設備での給湯、昇温に多くの熱が必要になる時期には、24時間の内、ピークタイムにおいて熱量不足になる場合があるとのことでした。そのため、部分的にバックアップ用の化石燃料ボイラーとのハイブリッド利用がなされているそうです。

このようなバックアップボイラーは、今回の見学施設全てに設置され、家庭用の石油ボイラー(白鷹町役場庁舎除く)を複数台並列で繋ぎ、木質バイオマスボイラーと同じ熱量を出力できるようにしているとのことです。なお、規格品である家庭用ボイラーを採用することによって、輸入した木質バイオマスボイラーとは対照的に、部品調達や突然のトラブルにも対応しやすくしている点も工夫の一つであるということでした。

輸入した木質バイオマスボイラーを採用する場合は、国内代理店に部品が確保されていることを確認しておかないと、部品を都度船便で調達することになり、すぐに復旧が難しくなるとのことで、そうした点もメーカー選択上の重要なポイントとのことでした。

複数事業者による燃料供給

温浴施設:山形県飯豊町 しらさぎ荘

参考リンク:山形県いいで添川温泉 しらさき荘

本施設への燃料供給はこれまでの事例と異なり、那須建設株式会社だけでなく、地元の建設業者、製材事業者、土木事業者、チップ製造事業者(キノコの菌床栽培も実施)の計5社で分担して実施しています。これは、施設の位置がおきたまチップセンターから離れていることや、地域内事業者との関係性を考慮してとのことでした、なお、納入するチップの品質に責任をもってもらうため、各事業者によるチップ納入は月単位で担当しているそうです。

ボイラーはリバーヒルに設置された形式と同じ120kWの3台構成であり、ノウハウが定着してきたことがここからも分かります。

しらさぎ荘において、木質バイオマス熱利用が実現できた理由として、飯豊町がSDGs未来都市やバイオマス産業都市として認定されていたことが大きいとのことです。これにより、各種の補助が利用しやすい状況であったり、市民からの目線も地域内の持続可能性や資源利用に対して寛容であったりしたようです。

しかしながら、企画段階から実現まで約5年経過していることも事実です。このような公的なプロジェクトは、スタートしてすぐに実行できるとは考えず、年単位での時間を見積もっておく必要があるとのことです。

参考リンク:飯豊町バイオマス産業都市構想
参考リンク:山形県飯豊町/SDGs未来都市計画を策定しました(飯豊町役場HP)

番外編

バイオガス発電・ながめやまバイオガス発電

参考リンク:ながめやまバイオガス発電所 竣工式(東北おひさま発電株式会社HP)

ここまでは木質バイオマスの熱利用に関する事業をみてきましたが、本見学会の最後に牛糞バイオマスを利用した発酵メタンガス発電施設のながめやまバイオガス発電所の見学もさせていただきました。本施設も那須建設株式会社の関連会社である「東北おひさま発電株式会社」が事業者であり、地域でのバイオマス利用のパイオニアとして、那須建設株式会社の種々の取組について凄みを感じられました。

本施設では、米沢牛で有名な地域ならではの肉牛牛舎から発生する糞尿を、牛舎・発電所間のパイプラインを通じて収集し、約45日の発酵期間を経て、メタンガス発電施設において発電を行うとのことです。

地域資材を有効活用する面において、木質バイオマスの地域内利用とも親和性の高い話をお聞きすることができ、水と混ぜることのできる物質だからこその運搬方法や処理方法、発酵ガラのさらなる有効活用なども検討されていました。

木質バイオマスボイラーのビジネス性

補助金の有効活用

菅原様によると「これまでの木質バイオマスボイラーの設置は、イニシャルコストを考えると、補助金の活用が前提の事業プランである。そのため、補助金の活用ができない場合は事業化が難しく、いかに様々な制度を理解して有効に活用していくかがポイントとなる」とのことです。

農林水産省、環境省や地方自治体といった、まず初めに思いつく支援元だけでなく、経済産業省の先端技術系の補助金といった、一件畑違いのような制度も利用し、様々な方法でイニシャルコストを抑える必要があるそうです。このような事業を行う知恵や経験があれば、そのような人たちを後押ししてくれる現実も間違いなく、地域で生まれてくるとのことでした

また、事業を検討する上で単一の補助金を活用するだけでなく、様々な部分に活用可能な支援制度もあるため、これらの複合的な活用を模索することも大切であるとのことでした。特に事業に取り組んだ当初は、すぐに事業から手を引くと思われていたのか、補助額も少額しか認められなかった場合もあったとのことです。しかし、次第に実績を積み上げたことにより、徐々に価値が認識されてきて、地元自治体からの単独の支援も増えてきたとのことでした。このような継続した事業展開こそが、地域でバイオマス利用を進める上では重要と感じました。

為替の影響

木質バイオマス熱利用を進めていく上では、建設・設備投資の時期も非常に重要とのことでした。

その理由として、

  1. 設置する木質バイオマスボイラーの多くは欧州、特にオーストリア製の製品であり、円安の影響を直接受けてしまう点
  2. 設置後のランニングコストの比較で考えると、円安・油高により、想定よりも早い段階でコスト回収ができる点

といった為替によるデメリット、メリットの両面があり、その見極めが重要とのことです。

事業を立ち上げる段階では、現状の円安水準であると、どうしても設備導入者の負担が大きくなってしまいます。運用段階では、原油高・円安の影響により、想定計画より早い段階での投資回収が可能となります。実際、那須建設株式会社で最初に木質バイオマスボイラーを設置したはぎ苑では、7~8年での投資回収を見込んでいましたが、4年で回収できたとのことでした。

もちろん、原油安・円高が進むと上記の逆のことが起こってしまいます。このように、単純に地域の需要だけをみるのではなく、国際的な経済情勢も影響する点は、事業計画を立てる上で重要なポイントといえそうです。

地域需要の掴みを握る重要さ

本見学会にオブザーバーとして参加されていた、やまがた自然エネルギー株式会社の山田氏は「『バイオマスより石油の方が楽』と地域の人が考えてしまったらおしまい。最初の段階で人々が『外にお金が流出するぐらいなら、同じ利益が出るやり方を地元で回して、生きる力をつけるべき』という認識を共有しておかないと、途中で空中分解してしまう。目先の利益に飛びつくのではなく、地域内での経済効果やトータルコストを意識した上で、木質バイオマスの利用を推進していくべき」と訴えられました。

また、2022年にボイラー規制の緩和により、木質バイオマス温水ボイラーが簡易ボイラーとして認められ、有圧ボイラーであっても導入が容易になりました。これにより、無圧化といった法令に合わせた改造を行う必要がなくなり、欧州製の効率的なシステムがそのまま導入できるようになりました。改造が不必要となることで、メンテナンス効率も高まり、耐用年数を伸ばすことにもなっています。

こうした規制緩和のメリットを活かし、既存のプランでは実現できなかったような方法で、今後の地域需要をどのように掘り出していくかが重要になってきそうです。

見学会を終えて

本見学会では、行政からの要請を元に、那須建設株式会社が地域の核として構築された地域循環型での木質バイオマスの利用スキームを学ぶことができました。

特に木質バイオマスの利用は、燃料の調達(木材生産・調達、チップ加工)といった、化石燃料ボイラーでは必要ない工程が入る中、「システム設計・運用だけ」という事業者ではなく、川上から川下までをサポートする体制づくりを行える企業・座組みが重要であることが分かりました。

特にボイラーメーカーは、海外商品を扱う兼ね合いから、製品自体のメンテナンスに責任を持ちますが、オペレーションまで受け持つところは非常に少なく、このような取組はメーカーから遠く離れた日本で木質バイオマスの利用を行うためには必須です。

また、交流会や見学会実施中のインタビューでは、

「自分の地域では熱利用の話が上がっても、誰がお金を出すのか、どのように設置・管理するのか、コストや設備の耐久性についてなど、様々な問題が噴出していました。しかし、本研修に参加することで、自分の中で一つの解を得る事ができました」

「これまで全く異なる業界にいる中で、自社にて運営する施設におけるボイラーの転換を検討する中、木質バイオマス熱利用を知り、実際に導入する上での課題や注意点を知るために参加しました。今回の見学会では、那須建設株式会社の主要業務である建設業からの知見やグループ企業内での導入に向けた注意点などを知ることができました。一方で、地域で完結できる熱供給や燃料確保の難しさを知ることができました。また、既に地域に様々なステークホルダーがいる那須建設株式会社だからできたと感じる部分もあり、本事例だけを参考にするのではなく、様々な目線で木質バイオマス熱利用のあり方を探っていきたいと思います」

「このような会に若い世代が参加することは非常に良いと思います。できるならば地域で就職しようとするような子達や実際に現場で働いて数年の子達を連れてきたいと感じました。現場ではただただ目の前のことを言われて行うだけの場合が多いですが、本事業のように地域のためということを理解した上で、新しい事業に向かうことができれば、働くモチベーションアップにも繋がると感じました」

といったことを伺えました。

自分自身の会社や自治体だけが何かをしようとしても、このような地域循環型の事業は生まれず、新たな価値を生み出そうとするイニシアチブを官民協働で行う事が大切ということが分かりました。

一方で地方でのプレイヤー不足についても、触れられている方もおり、まだまだ導入事例が少ないバイオマスボイラーの専門家を新たに増やすアプローチだけでなく、今事業を行っている人がバイオマスボイラーについて、深い造詣を持つことや関心を持ってもらう工夫も必要だと分かりました。

また、他の地域では行政職員や地域おこし協力隊などの実行者、供給側の森林組合、需要側の公共施設・福祉施設の職員など、様々な立場の方々が「腹を割って話し合うこと」で事業の実現に落とし込む形式が多かったです。しかし置賜地域では、現地導入事業者である那須建設株式会社だけでなく、地域の関係する協力事業者とで、より細かい日常的な問題解消などを担い、それぞれの役割を明確にして、地域での実装を検討してきたことが実を結んでいると感じました。

以上の内容から、ステークホルダーの利益やインセンティブを意識し、システマティックに座組みが構築されていることが非常に興味深い地域でした。

また、今回紹介した白鷹町役場では、地域内での再生可能エネルギー利用を進める中に、木質バイオマス利用の推進も入れ込んだ「令和5年度白鷹町再生可能エネルギー推進事業費補助金」が設定されていることも特徴的でした。

本補助金では、木質バイオマス燃焼機器(ストーブ)に対して補助がされるとのことです。特に若手に人気の高い薪ストーブなどにも利用できるとのことで、非常に魅力的な補助金整備がされております。

このように環境意識の高さが役場だけでなく、地域住民の需要としても発生している部分が、地域としての受容感、方針となり、木質バイオマス熱利用の普及においても大切であることも本研修で知ることができました。

参考リンク:蓄電池設備・太陽光発電設備・木質バイオマス燃焼機器(ペレットストーブ及び薪ストーブ)設置補助制度(白鷹町HP)

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