2023年12月11日

令和5年度第2回現地見学会レポート

2023年11月20日~21日に、福井県坂井地域において一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会主催のWOOD BIO交流プラットフォーム令和5年度第2回現地見学会が開催されました。

見学会は、木質バイオマス熱利用を実践している先行施設を訪問し、施設導入に向けたプロセス、課題、マネジメント方法、燃料材の安定供給について理解を深め、先行事業者、参加者間でのネットワークを構築することを目的としています。

見学先一覧や、日程は以下のとおりです。


 2023年11月20日
  ホテル美松(福井県あわら市)
   ・木質バイオマスボイラーの視察
   ・もりもりバイオマス株式会社による講義
 2023年11月21日
  坂井森林組合
   ・チップ製造及びチップストックヤードの視察
  グランディア芳泉
   ・木質バイオマスボイラーの視察
  三国オーシャンリゾート&ホテル
   ・木質バイオマスボイラーの視察

福井県坂井地域における木質バイオマスボイラー導入の経緯

もりもりバイオマス株式会社による講義
 講師:もりもりバイオマス 取締役 土田様
    マルツホールディングス 企画部新エネルギー課 課長 大城様

もりもりバイオマス株式会社は、環境省・林野庁の事業採択を受け2014年度より開始した実証事業「あわら三国もりもりバイオマス」の3年間の活動で得られた事業ノウハウを引き継ぎ、民間事業として運営していくために2017年に設立されました。この環境省・林野庁事業では協議会を設置し、ホテル等の熱需要家や林業関係者、設備・建築業者、銀行、新聞社、コンサルティング会社、行政、学識経験者等の参加を得て、木質バイオマスエネルギーの利用に関し、多くの地域の関係者の合意形成を図りつつ、事業化構想を策定しました。

木質バイオマスの利用形態として発電もありますが、よりエネルギー効率の高い熱利用を行うことが重要です。坂井地域・あわら市には温泉ホテル等が多く、温泉の昇温には従来、重油等の化石燃料が使用されていましたが、これを木質バイオマスによる熱供給に置き換えることを目指しました。

当社では、ボイラー設備や木質チップを販売するのではなく、木質バイオマスによる熱供給会社として、当社保有の木質バイオマスボイラーをホテル等に設置し、「熱を販売する」事業を行っています。この事業形態(オンサイト第三者保有モデル)の場合、ホテル等の熱需要家は、設備投資なしに木質バイオマスボイラーの熱を利用できるというメリットがあります。また、需要家はバイオマスボイラーを管理する必要がなく、熱量に応じた費用を支払うだけでよいという事業です。

出典:もりもりバイオマス株式会社

現在の主な熱需要家は、ホテル美松、グランディア芳泉、三国オーシャンリゾート&ホテルであり、坂井森林組合で製造した約2,100トンの木質チップを燃料として、年間約2万GJの熱を販売しています。

熱料金は、基本料金と従量料金の二部料金制としており、従量料金(売熱単価)は、A重油価格にリンクさせています。

木質バイオマスボイラー導入のプロセス

木質バイオマスボイラー導入における一般的なプロセスは、以下のとおりです。

出典:もりもりバイオマス株式会社

フェーズ1「事業化構想」の段階では、既設の化石燃料ボイラーの燃費や燃料費を、カタログ値に基づく机上計算ではなく、実測を行うことが重要となります。化石燃料ボイラーも経年劣化等により、燃焼効率が悪くなっていることが一般的であるため、実測して比較することにより、木質バイオマスボイラーへの転換で経済メリットを出しやすくなります。

また、地域への経済波及効果は、地域産業連関表を用いて定量化をすることにより、地域産業への貢献を説明することができます。例えば、あわら市内のホテルが約2,000万円/年の重油購入を木質バイオマスの熱購入へ切り替えると、市内の経済規模は約560万円増加すると試算されます。

木質バイオマス熱利用事業成功のためのポイント

木質バイオマス熱利用事業を成功させるためのポイントはいくつかありますが、その第一が、熱利用の目的、ゴールを設定することです。目的がぶれると、事業が迷走してしまいます。

当社では、民間による収益事業として、旅館・ホテル等の光熱費削減や、森林組合等での間伐材(CD材)を付加価値化することを目的としました。

第二に、地域に今ある木質バイオマスの種類やチップ製造主体、熱需要施設などのリソースの確認と、今後開発すべきリソースの整理が重要です。希望的観測に基づく楽観論は禁物です。

また、地域での体制づくりと責任者(社)の明確化も重要です。木質バイオマス利用は幅広い分野にまたがる専門的知識が必要となるため、新しい人材の起用が必要となることもあります。同じく、リスクとリターンを持つ主体者の明確化も必要であり、民間事業の場合、地元のオーナー企業でないと難しいと思われます。当社の場合は、マルツホールディングス社が51%株主として最終的な責任を持つことを前提として、地元の有力企業(オーナー企業)による共同出資であり、一種の協同組合的な姿となっています。

木質バイオマスボイラーシステムの設計・運営

木質バイオマスボイラーは、ベースロード熱源となります。バイオマスボイラーはプラントのkW単価が高いため、熱ピーク需要に対しては、kW単価の安い化石燃料ボイラーを充てる(組み合わせる)ことが、費用効率的となります。蓄熱タンクを組み合わせることも有効ですが、スペース確保の課題もあります。

木質バイオマスボイラーの比較検討にあたっては、初期費用だけにとらわれず、熱量MJあたりのコストを比較することが重要です。また、ボイラーの耐用年数はフルロードアワー(定格出力ベースの稼働時間:年間設備利用率)に大きく左右されるため、留意が必要です。

また、供給熱量を維持するという観点では、3現主義(現場、現物、現実)に基づき、不具合はすぐに直すことが重要です。

蓄熱タンクの容量は、需要の測定によりピーク需要を把握し設計することが基本ですが、参考容量としては、20L/kW×ボイラー出力kWにより、簡易的に試算することもできます。

木質チップサイロ容量は、トラック容量や搬入頻度とボイラー出力、一日の最大消費量などから設計しますが、参考容量としては、(7日間フル稼働で消費する燃料)/ 0.65+20 m3で、簡易的に試算することもできます。サイロには、地下式、半地下式、地上式があり、設置場所に見合ったサイロ方式を選定しますが、ランニングコストや補助金の適用も考慮します。

当社事業では、木質チップは坂井森林組合のチップを使用しており、チップの水分(湿潤基準含水率)は30%程度です。チップの水分管理は重要であり、当社でも抜き取り検査を行っています。

木質バイオマス代替率(ホテル等で使用する熱量のうち、木質バイオマスボイラーで賄う比率)は、ホテル美松:8割程度、三国オーシャンリゾート&ホテル:6割程度、グランディア芳泉:5割程度です。

具体的な木質バイオマスボイラー事例

温泉ホテル「グランディア芳泉」の1号機(2015年6月導入)

ここでの熱のメイン需要は、温泉の昇温(加熱)であり、一部給湯があります。

坂井森林組合が保有する大型トラックは10トン車であるため、本来は10トン車で搬入したいのですが、搬入路の地下に耐荷重6トンの水管があるため、やむなく4トン車での搬入としました。10トン車40m3に対して、4トン車8m3であるため、納入頻度は5倍となります。

当社にとっても、本件が木質バイオマスボイラー導入の1号機であり、日本製の巴商会「ENER D200A」(200kW)を導入しました。

1号機のフルロードアワーは非常に高く、この値が大きいほど、投資回収効率がよくなります。

また、「グランディア芳泉」の2号機(2021年6月導入)は、日本製の巴商会「ENER D300」(300kW)であり、このフルロードアワーは高い数値です。

三国オーシャンリゾート&ホテル

ここでの熱のメイン需要は、温泉の昇温(加熱)であり、一部給湯と暖房(セントラルヒーティング)があります。

ここでは、オーストリア製のKWB社「MF2 D120」(120kW)を2基導入しました。

経年劣化や故障などにより、フルロードアワーは他の施設と比べると低い状況となっています。事前に想定したフルロードアワーに適したボイラー機種を選定することが重要となります。

ホテル美松

ここでの熱のメイン需要は、温泉の昇温(加熱)であり、一部給湯があります。

ここでは、オーストリア製のKWB社「Powerfire」(300kW)を2基導入しました。

このあたりは温泉地であり水位が高く地盤が悪いため、サイロは地上式としました。工事費初期投資は低いですが、ホイールローダーによる搬入が必要となり、ランニングコストは上昇します。

KWBは欧州製品であるため、元々、有圧ボイラーですが、従来は日本のボイラー規制対応のために輸入時点で無圧化し、無圧温水器として運用していました。2022年のボイラー規制緩和を受けて、有圧化の設備改造を行い、現在は有圧の簡易ボイラーとして運用しています。有圧化により、不要なポンプや熱交換機を削減できるため、省電力や省メンテナンスというメリットがあります。ホテル美松以外の当社設置ボイラーは、現在もすべて無圧温水器として運用しています。

坂井森林組合による木質チップの供給

講師:坂井森林組合 業務課長 齊藤様、加工販売課長(RBセンター長)河原様

坂井森林組合は、管内森林面積約11,814ha、正組合員数1,500名の比較的小規模な森林組合ですが、木質チップ製造など先進的な取組を行っています。

当組合は2001年に「WOODリサイクルセンターさかい」を設置し、破砕チップの製造を始めたほか、2013年には「WOODバイオマスセンターさかい」を設置し、切削チップの製造販売を行っています。また同組合では、フクビ化学工業株式会社の木質プラスチック向けに、木粉を供給しています。

破砕チップは、剥皮や乾燥を行わず、大規模発電所に供給します。また切削チップは、水分35%以下に乾燥させたものを、もりもりバイオマス株式会社の熱利用ボイラー向けに供給します。

チップを乾燥させるために、原木状態で半年~1年程度、はい積みして乾燥させます。効率的に乾燥させるため、あらかじめ原木を割ることや、透湿防水シートを被せることを行っています。

最近では、県外の大規模発電所や製紙会社からチップ供給の引き合いが増えていますが、当組合では、地産地消のため、もりもりバイオマス株式会社の熱利用ボイラー向けの供給を最優先と考えています。また、熱利用チップの輸送距離は短いため、輸送コストのぶれが生じにくいことも当組合のメリットです。

当組合では、発電用チップ供給の取組として、中間土場で移動式チッパーにより枝条・短材を加工し効率的な運送を行っています。他の森林組合とも連携し、伐採現場近くに設けた中間土場に当組合の移動式チッパーを設置し、受託により枝条等のチッピングを行っています。

PLATFORM

各プラットフォームについて